奨励会員の無念が胸を打つ。ハンカチを用意して読みたい感動の書。〜大崎善生『将棋の子』

20161114

大好きな将棋の本を紹介します。

 

はじめに

今週19日(金)に、夭折の天才棋士・村山聖を主人公とした映画が公開されます。

http://satoshi-movie.jp/

原作は大崎善生『聖の青春』。

「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、膀胱癌のため29歳の若さで亡くなったA級棋士・村山聖の生涯を、師匠である森信雄や同世代の棋士たちとの交流を交えて描いた名作です。

同じく将棋を題材とした大崎氏の著作に『将棋の子』があります。

『聖の青春』が天才プロ棋士の生涯を追った作品なのに対し、本書はプロ棋士になれなかった奨励会員を主題にした作品。

今回は本書を取り上げます。 

 

『将棋の子』

本書の主人公は、プロ棋士を目指す成田英二。

 

物語は昭和44年の札幌から始まります。

突如として巻き起った将棋ブームの中で、小学6年生だった大崎は、ふと「北海道将棋会館」の看板に目をとめます。

そこで、勝てないながらも大人相手に指して、たまの勝利に大喜びするなか、突如出会ったのが成田英二。

当時、天才少年と呼ばれていた成田は、小学5年生にしてアマ三段の腕前。大崎の目の前で、道場最強の大人相手に勝利します。

自分より歳下の小柄な少年が、道場の大人を次々に負かしていく姿にショックを受け、大崎は道場に通わなくなり、将棋とも離れますが、大学時代に新宿のスナックで久しぶりに将棋を指したのがきっかけとなり、ふたたび新宿にある将棋道場に通うようになります。

周囲の学生が就職活動に勤しむなか、大崎はどんどん将棋にのめり込み、雨の日も風の日も道場に通います。

そして、1年後にはアマ四段というスピード昇級。しかし、アマといえども、その上に行くには至難の業で、足踏みしたまま道場に通う中、誘いがあった日本将棋連盟に就職。

そこで再会したのが、プロ棋士の養成機関である奨励会で苦闘する成田でした。

 

奨励会の年齢制限という壁

本書では、奨励会での熾烈な昇段争いに敗れ、転落していく成田の姿と、同世代の奨励会員達の群像を追います。

とりわけ、心筋梗塞で父親を亡くし、母親と二人三脚でボロボロになりながらも将棋に向き合う成田の姿は涙を誘います。

 

そんな成田の前に大きく立ちはだかるのが、奨励会の年齢制限という壁。

これについて、簡単に説明しましょう。

以下、本書からの引用です。

年齢制限の壁は主に二つの体系から成り立っている。21歳の誕生日までに初段、そしてもうひとつは26歳の誕生日までに四段というものである。(中略)

21歳の誕生日までに初段。それをクリアできなければ、もの心ついたときから目指し、信じてきたただひとつの道を閉ざされてしまうことになる。17~18歳の育ち盛りの青年が自分の誕生日を恐れるようになる。ひとつ歳をとることは、すなわち与えられたわずかな寿命を確実に食いつぶすことを意味する。

17~18歳といえば加速度的に世界が広がり、自分の中にさまざまな可能性を見出していく年頃だ。学校という閉ざされた環境の中にしかなかったはずの自分の場所や存在理由が、もっと広い社会の中にもあることを知り、胸をときめかす年齢のはずである。

しかし、奨励会員たちは違う。

歳とともに確実に自分の可能性はしぼんでいく。可能性という風船を膨らまし続けるには、徹底的に自分を追い込み、その結果身近になりつつある社会からどんどん遠ざかっていかなくてはならないのだ。

ある意味では人間の生理に反した環境といえるかもしれない。それが、奨励会の厳しさであり悲劇性でもある。

 

プロ棋士を目指す奨励会員は、26歳までに四段に昇段しなければなりません。

四段に上がるには、年2回行われる三段リーグで上位2位に入る必要があります。

現在、三段リーグには32名が在籍していることから分かるとおり、その厳しさは凄絶。

奨励会という将棋の天才が集まるなかで、一握りの天才中の天才だけがプロ棋士になれるのです。

そして、多くの奨励会員は、志半ばで将棋の世界を去っていくことになります。

 

成田は昭和60年1月、二段の段位で奨励会を去ります。

 

おわりに

本書は成田英二を軸に、プロ棋士となる夢に破れ、将棋界を去っていった若者たちの姿を、美しい筆致で描きます。

幼い頃から神童と呼ばれ、生活のすべてを将棋に捧げてきた若者が、奨励会という鬼の住処で、自分は天才ではなかったと認めざるをえない状況に追い込まれる。

そして、年齢制限の壁に阻まれ、20代半ばで失意のもと社会に放り出される。その無念さが胸に迫ります。

著者の大崎氏は、前作『聖の青春』を書き終えた後、「次作は、奨励会を去っていった者について書かなければならない」との思いから、雑誌『将棋世界』編集長の職を辞して、本書の執筆に取り掛かっています。

将棋を知らない方にもぜひお読みいただきたい、感動の書です。

 

今日はこんなところで。
それではまた。

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■Editor’s Note

 今日はホームページの更新と研修受講の予定。

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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区で開業している公認会計士・税理士です。大手監査法人、M&Aコンサル、税理士法人を経て2016年9月に独立開業しました。妻と息子の3人暮らし。海外サッカーと囲碁が大好き。英語、数学を勉強中。 ブログでは、税務・会計の話題や仕事術、日々の出来事などを気ままに綴ります。