会社の「のれん」って何?「のれん」の意味と会計処理を徹底解説します。

20170325

 

今朝の日経新聞に以下の記事が掲載されていました。

国際会計士連盟会長「のれん、適宜再評価を」
 世界130カ国・地域の会計士から成る国際会計士連盟(IFAC)のレイチェル・グライムズ会長は日本経済新聞に「日本で監査への信頼が高まることはアジア全体として重...

 

この記事の中で、国際会計士連盟会長による以下のコメントが載っています。

M&Aで純資産に多額の上乗せ価格を支払うことが増えており、それに伴い「のれん」は増加している。買収の時点では合理的と考えられた上乗せ額が本当に価値に見合っているかどうか、小まめに検証・判断して損失を認識すべきだ。個人的には償却が好ましいし、実態を映していると考える。 

 

今回はこの記事を題材に、会計上の「のれん」とは何か、日本基準、国際基準における「のれん」の会計処理の相違について取り上げます。

 

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「のれん」とは?

まず「のれん」とは何かについて説明しましょう。

「のれん」とは、合併・買収時における会社の「純資産」と「買収価格」の差額のことをいいます。

これだけだと、何のことか分かりませんね。会社のバランスシート(BS)をもとに説明しましょう。

 

純資産は株主にとっての価値を表す

買収先企業のBSが以下のとおりだとします。

 

貸方(右側)の純資産は、会社の資産から負債を差し引いた金額で、株主にとっての会社の価値を示します。

株主がこの会社を誰かに譲りたい(株式を譲渡したい)と考える場合、最低限この金額がベースになります。

2017 03 25 1037

 

BSに載らない無形資産がある

しかし、会社の買収・合併にあたり、実際にこの金額(純資産の金額)で会社の売買が行われることは稀です。

というのも、会社のBSには載っていない(オフバランスの)資産があるからです。

たとえば、会社のブランドやノウハウ、経営者や従業員の質、顧客網といった要素は、他社との競争戦略上、重要な要素になりますが、こういった無形資産の価値はバランスシートには載っていません。

したがって、BSの純資産をもとに合併・買収の対価を決めると、これら無形資産の価値が含まれないことになってしまいます。

 

合併・買収の対価には無形資産の価値が含まれる

実際、会社の売買を行う場合、売買価格には対象会社の純資産に加え、買収者が評価した無形資産(対象会社が有するブランドやノウハウ)の価値が含まれます。

たとえば、上記の例で、オフバランスになっている諸々の無形資産の価値を300と評価した場合、買収価格は700になります。

2017 03 25 1039

ここで、対象会社の純資産400と買収価格700の差額300は、対象会社が有する無形資産を評価したものです。

これを会計上、「(広義の)のれん」といいます。

厳密には(広義の)のれんに含まれる無形資産のうち、商標権や特許権など個別に特定できるものは該当する資産に振替える必要があり、この手続をPurchase Price Allocation(PPA)といいます。

PPAの結果、なお残ったのれんのことを「(狭義の)のれん」ということがありますが、本稿では簡単化のため、特に両者を区別しません。

のれんは、対象会社のブランド価値やノウハウなど、同業他社に対する優位性(=超過収益力)を根拠とするものであるため、「のれんは対象会社の超過収益力を示すもの」といわれることがあります。

 

のれんの会計処理

合併・買収時に発生する「のれん」の会計処理は、日本の会計基準と国際会計基準(国際財務報告基準 IFRS)では大きく異なります。

具体的には、のれんの償却(規則的な費用処理)の要否です。

 

日本基準では償却が必要

日本の会計基準では、のれんは20年内の一定の年数で償却することが必要です。

前述のとおり、のれんは対象会社の超過収益力を評価したものですが、超過収益力は時間の経過とともに減価していくというのが論拠です。

のれんの減価分は損益計算書に反映すべきなので、規則的な償却を義務づけています。

 

IFRSでは償却不要、減損のみ

一方で、国財財務報告基準(IFRS)では、のれんの規則的償却は不要で、価値が大幅に下落した場合に減損処理する方法を取っています。

  • のれんは減価しない(超過収益力は維持される)
  • 償却を義務付ける場合、償却期間、償却方法の設定に恣意性が介入する

ことを論拠とします。

 

どちらの基準が妥当か?

日本基準、IFRSのどちらの基準を採用するかで、のれんの会計処理が異なるため、利益の金額が異なってきます。

事実、M&Aを活発に行う会社のなかには、のれんの償却負担を嫌って、IFRSを採用する企業が多いです。

 

Eコマースの楽天もそのなかの1社で、同社はH25年度からIFRSを適用しています。

楽天の三木谷社長はかつて、のれんの会計処理に触れて、

「のれん」の償却により営業利益が減少することから、「のれん」の償却が不要な海外企業に比べて、日本企業が M&A を行う上で不利になる。IFRS、米国基準と同様に「のれん」を非償却資産とするか、一括償却を認めるべき。

 と主張されていました。

 

のれんの会計処理を巡っては、10年以上前から償却派(主として会計学者)と非償却派(経営者)との間で議論が戦われてきましたが、いまだ決着はつかず、議論は収束していない状況です。 

それもあって、他の多くの論点では日本基準とIFRSとで相違が無くなりつつあるなか、のれんの会計処理は依然として重要な差異として残っています。

 

最後に、僕の個人的見解をいうと、のれんが減価しないという前提は成り立たないと思うし、規則的償却を排し、減損一本槍では、いつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えているようで、経営の安定性という点から好ましくないと考え、償却を義務付ける日本基準を支持しています。

 

そんななか、国際会計士連盟の会長による、「のれんの償却が好ましい」とのコメント。

のれんの会計処理に関する動向には、今後も注目していきたいと思います。

 

今日はこんなところで。

それではまた。

 

あとがき

■Editor’s Note

昨日まで1泊2日で東北出張。3月下旬とは思えない寒さで、途中雪も降っていました。
東京もなかなか暖かくならないですね。
今日は、ブログ・HPの更新のほか、溜まった雑務をこなす予定です。 

■Today’s article

Samsung Electronics chief says sorry for scandal

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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区で開業している公認会計士・税理士です。大手監査法人、M&Aコンサル、税理士法人を経て2016年9月に独立開業しました。妻と息子の3人暮らし。海外サッカーと囲碁が大好き。英語、数学を勉強中。 ブログでは、税務・会計の話題や仕事術、日々の出来事などを気ままに綴ります。