DCF法による株価評価の基本~現在価値の計算

前回まででDCF法の計算基礎となるキャッシュフローと割引率の計算方法を説明しました。

そこで、今回は簡単な計算例を用いて、DCF法による企業価値の評価を一巡してみましょう。

設例

予想PL

  1年目 2年目 3年目
売上高 10,000 12,500 15,500
売上原価 6,000 7,500 10,000
売上総利益 4,000 5,000 5,500
販管費      
 人件費 1,500 1,700 1,900
 減価償却費 2,000 2,300 2,250
営業利益 500 1,000 1,350
設備投資 1,600 1,200 1,500
実効税率 35% 35% 35%

キャッシュ・フローの計算

まず、上記の予想PLに基づき、3年間のキャッシュフロー(FCF)を計算します。

FCFの計算式は以下のとおりでした。

  • FCF=税引後営業利益+減価償却費±運転資本の増減額-設備投資額

税引後営業利益は、予想PLの営業利益と実効税率を用いて以下のように求めます。

  • 1年目 営業利益500×(1-35%)= 325
  • 2年目 営業利益1,000×(1-35%)= 650
  • 3年目 営業利益1,350×(1-35%)= 878

減価償却費は予想PLそのままの金額なので問題ありませんね。

 

次に、運転資本の計算はやや注意が必要です。

会社が予想BSを作成していれば、BSの売上債権、棚卸資産、仕入債務の金額を使って計算すればよいのですが、予想BSまで作成しているケースはまれです。

そこで、多くの場合、以下のとおり過去の回転月数を用いて運転資本の推定計算を行います。

  回転月数 現在 1年目 2年目 3年目
売上債権 2 1,500 1,667 2,083 2,583
棚卸資産 1.5 1,000 1,250 1,563 1,938
仕入債務 1 (700) (833) (1,042) (1,292)
運転資本   3,200 3,750 4,688 5,813
運転資本の増減     (550) (938) (1,125)

この例では、売上高をもとにした回転月数を、売上債権2か月、棚卸資産1.5か月、仕入債務1か月としています。

すると、1年目の各残高は、

  • 売上債権 売上高10,000÷12×2か月= 1,667
  • 棚卸資産 売上高10,000÷12×1.5か月= 1,250
  • 仕入債務 売上高10,000÷12×1か月= 833

と計算されます。

2年目以降も同様です。

なお、運転資本の増加はキャッシュフローのマイナスになる点に注意してください。

 

最後に、設備投資の金額は、予想PLにあるとおりです。

 

以上をまとめると以下のとおりになります。

  1年目 2年目 3年目
税引後営業利益 325 650 878
減価償却費 2,000 2,300 2,250
設備投資 (1,600) (1,200)  (1.500)
運転資本の増減 (550) (938) (1,125)
FCF 175 812 503

割引率の計算

続いて、現在価値を計算するための割引率を求めます。

割引率の算式は以下のとおりでした。

WACC =[rE × E/(D+E) ]+[rD × ( 1-T) × D/(D+E)]

  • rE=株主資本コスト
  • rD=負債コスト
  • D=有利子負債残高(時価ベース)
  • E=株主資本残高(時価ベース)
  • T=実効税率

ここでは、各数値を以下のとおり仮定します。

  • rE = 10%
  • rD = 2%
  • D = 5,000
  • E = 6,000

すると、WACCは以下のとおりです。

WACC = rE 10% × (E 6,000 / (D 5,000+E 6,000)) + rD 2% ×(1 – 35%)× (D 5,000 / (D 5,000 + E 6,000))
             = 6.0%

現在価値の計算

これで準備が整いました。

いよいよ現在価値を計算しましょう。

現在価値の計算式は、以下のとおりです。

現在価値=1年目のFCF / (1+WACC) + 2年目のFCF / (1+WACC)^2 + 3年目のFCF / (1+WACC)^3+残存価値

残存価値という見慣れない用語が出てきました。これについては、次回説明しますので、まず3年目のFCFまでの現在価値を計算しましょう。

  1年目 2年目 3年目
FCF 175 812 503
WACC 6.0% 6.0% 6.0%
現価係数 0.943 0.890 0.840
FV 165 723 423
 Total     1,311

現価係数とあるのは、1/(1+WACC)、1/(1+WACC)^2、1/(1+WACC)^3の数値のことです。

3年目までの現在価値の合計は、1,311となりました。

 

さて、ここで計算したのは3年目までのFCFの現在価値ですが、当然、会社はそれ以降もキャッシュフローを生み出します。

それでは、4年目以降のキャッシュフローはどのように計算に織り込めばよいのでしょうか?

それは次回のお楽しみとしましょう。

(それではまた。)

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区で開業している公認会計士・税理士です。大手監査法人、M&Aコンサル、税理士法人を経て2016年9月に独立開業しました。妻と息子の3人暮らし。海外サッカーと囲碁が大好き。英語、数学を勉強中。 ブログでは、税務・会計の話題や仕事術、日々の出来事などを気ままに綴ります。