会社は(倒産しない限り)永続的にキャッシュフローを生み出します。
ところが、一般に、事業計画は3年から5年のスパンで作成されます。
すると、事業計画のみでは、計画期間終了後のキャッシュフローを企業価値に織り込むことができません。
どうすればよいのでしょうか?
カギになるのが残存価値の概念です。
残存価値とは何か?
DCF法は事業計画をもとにキャッシュフローを見積もり、現在価値に割り引いて企業価値を算定しますが、企業は永続的にキャッシュフローを生み出しますから、計画期間以降のキャッシュフローを別途見積もる必要があります。
これが残存価値(Terminal Value、TV)です。
DCF法における残存価値は、企業価値の大半を占めるため、重要度の高い項目です。
今回は、この残存価値の計算方法について、2段階に分けて見ていくことにしましょう。
残存価値の計算方法
残存価値は以下の算式により計算します。
残存価値(TV)= 予測最終年度の次年度のキャッシュフロー ÷ 割引率(r)
次年度のキャッシュフロー(分子)は、計画最終年度のキャッシュフローにもとにしますが、残存価値の計算は長期(理論的には無限期間)のキャッシュフローを考慮に入れますので、一般的には下記の仮定を置きます。
- 運転資本は一定に収束する ⇒ 運転資本の増減はゼロ
- 減価償却費と設備投資額は均衡する ⇒ 減価償却費―設備投資額=ゼロ
以上の仮定のもと、前回の設例で計算すると、
TV=最終年度の税引後営業利益878 ÷ 割引率6.0% = 14,633
※運転資本の増減=ゼロ、減価償却費-設備投資額=ゼロ のため、キャッシュフローは税引後営業利益と一致
となります。
残存価値を現在価値に割り引く
上記TVは計画期間最終年度を基準に計算していますので、その数値は将来価値を表しています。
そこで、これを現在価値に引き直すため、割引計算を行います。
計算式は以下のとおりです。
TVの現在価値=14,633÷(1+6.0%)^3=12,292
現在価値計算のまとめ
前回からの現在価値計算をまとめると、下表のようになります。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 残存価値 | |
FCF | 175 | 812 | 503 | 14,633 |
WACC | 6.0% | 6.0% | 6.0% | 6.0% |
現価係数 | 0.943 | 0.890 | 0.840 | 0.840 |
PV | 165 | 723 | 423 | 12,292 |
合計 | 13,603 |
これで、キャッシュフローの割引現在価値の計算ができました。
最終的な目的である、株主資本価値(株式価値)の計算まで、あと一息です。
次回は、株主資本価値の計算に必要な最後のステップ、非事業用資産と有利子負債の調整計算について説明します。
(それではまた。)
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