税務のとっても怖い話〜消費税のうっかりミスは命取り!

201609160822

今日はうっかりミスが命取りとなる税務の怖い話です。

 

事案の概要

関西電力(原告)の平成15年3月期の消費税等について、原告がその法定申告期限及び法定納期限(6月2日)までに消費税等として総額247億7850万9700円の納付はしたものの、その申告書の提出をしていなかったとして、所轄税務署長が、消費税等の税額に5%を乗じて計算した12億3892万5000円の無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、原告が本件処分の取消しを求めたもの。

消費税の法定申告期限・納期限は課税期間終了後2ヶ月以内です。

原告は納期限までに消費税の納付を行っていましたが、申告書の提出を失念しました。

そこで、所轄税務署長が、国税通則法に基づき無申告加算税の納付を命じたものです。

ちなみに法人税については、確定申告書の提出期限の延長の特例(法法75の2)の申請を行うことで、確定申告書の提出期限は一月間延長されます。しかし、消費税法には同様の規定はありません。

 

事案の経緯

  • 平成15年6月  2日:消費税を申告期限内に納付
  • 平成15年6月13日:申告書の提出失念に気づき、消費税申告書を提出
  • 平成15年9月30日:12億円の無申告加算税賦課決定通知を税務署より受領
  • 平成16年9月20日:不服として取り消しを求める行政訴訟を地裁に提訴
  • 平成17年9月16日:提訴棄却
  • 平成17年9月22日:会社側控訴断念

会社は申告書の未提出に気づき、自主的に申告書を提出しましたが、課税当局は無申告加算税12億円の賦課を決定。

会社側はこれを不服として行政訴訟を提訴しましたが、大阪地裁は原告の訴えを棄却。

その後、会社は控訴を断念し、会社側の敗訴が決定しました。

 

申告書の提出が10日余り遅れただけで、12億円の制裁。。

ちょっと厳しすぎるのでは、という気もします。

 

会社の主張

裁判において、会社は下記の3点を主張しました。

少し長いですが引用します。

(1)原告は法定申告期限及び法定納期限である平成15年6月2日に、本件納付書とともに所定の消費税等の税額を納付したものであり、たとい適式の申告書の提出を欠いていたとしても、実質的には本件納付書が申告書の機能の相当部分をカバーする役割を果たしたと見ることができ、本件納付書の提出をもって税額の確定という申告の法的効果が生じるものとまではいえないものの、これを「瑕疵ある申告」とみなす余地は十分ある。さらに、申告書の提出忘れに気付いた原告は、直ちに自発的に期限後申告書を提出したのであるから、実質的にはこれによって申告に関する上記「瑕疵」は治癒されるに至ったといえる。

会社は納期限までに納付書とともに消費税の納付を行っている。申告書は提出していないが、これを「瑕疵ある申告」とみることができる。また、申告書の未提出に気づいた後、直ちに申告書を提出しているのだから、実質的に瑕疵は治癒されているという主張ですね。

 

(2)被告は本件納付を本件課税期間に係る消費税等の予納として扱っている。期限後申告書(本件申告書)の提出によって予納時にさかのぼって本税に充当の取扱いがされているから、無申告加算税算定の基礎となる通則法35条2項の規定により納付すべき税額がゼロであるため、結局原告に無申告加算税は課し得ないことになる。

納付した消費税は、期限後申告書の提出時に遡及的に本税に充当されるのだから、無申告加算税の算定基礎となる納付税額はゼロとなる。よって無申告加算税は発生しないという主張。

 

(3)通則法66条の定める無申告加算税は、行政上の制裁の一種に属するところ、本件は、実質上は同条の保護法益を侵害するものではなく、したがって、実質的違法性を欠くものとして、制裁の対象から除外されるべきことは、制裁法理上当然というべきであり、まさに、同条1項ただし書にいう「正当な理由」に当たるものというべきである。また、行政制裁の一般原則の一つである罪刑均衡の原則に照らしても、本件のように原告に巨額な制裁を課す本件処分は、この罪刑均衡の原則に大きく違背し許されない。

納期限までに消費税を納付していること、申告書未提出に気づいたのち自発的に申告書を提出していることから、実質的に違法性はない。それに対し12億円という巨額の加算税を課すのは厳しすぎるという主張です。

 

裁判所の判断

これに対し、裁判所は以下のとおり判示しました。

いずれも厳しい内容です。

(1)本件納付書の提出及び本件納付をもって「瑕疵ある申告」とみなした上、法定申告期限後に本件申告書が提出されたことをもって上記「瑕疵」が治癒したものと解することは、申告納税方式により納付すべき税額が確定するものとされている国税等の納税手続における納税義務者による法定申告期限内の納税申告書の提出の重要性をないがしろにし、申告納税制度を定めた法の趣旨を没却するものというべきである。

 

(2)国税の納付義務の確定に関する通則法の規定からすれば、被告による本件納付の上記消費税額への充当は、本件申告書が提出され、本件課税期間に係る消費税等の納付すべき税額が確定した時点において、当該税額の確定した租税債務についてされたものと解するほかなく、また、その充当の効果についても、原告の主張のように、いまだ本件課税期間に係る消費税等の納税申告書の提出もなく、したがってその納付すべき税額も確定していない本件納付時点にさかのぼって、上記消費税等に係る租税債務が消滅したものと解することはできない

 

(3)納税申告書の提出を失念し、これを法定申告期限内に提出しなかったこと自体が、申告納税方式による租税の納税手続の根幹を成す納税義務者の重要な義務の不履行といえる。たとい本件課税期間に係る消費税等の全額に相当する金額がその法定納期限までに収納機関に納付(本件納付)されているとしても、原告の上記義務違反が無申告加算税を定めた法の趣旨に照らして、実質的違法性を欠くということは到底できない。本件処分に係る無申告加算税の額は12億3892万5000円であって、高額であることは原告主張のとおりであるが、本件に適用された無申告加算税の税率(100分の5の割合)が原告の上記義務違反に比して重きに過ぎるということもできないから、罪刑均衡の原則ないし比例原則違背等をいう原告の主張も理由がない。

 (注)下線は引用者による

 

いずれの主張も一刀両断という感じで排斥しています。

たった10日余り遅れたくらいで、12億円の加算税は厳しすぎるんじゃないのと思ってしまいますが、申告納税制度を採用する日本において、申告期限までに申告書を提出する義務はそれほど重いものだということを裁判所は判示しているのだと思います。

 

制度改正

この事案を受けて、その後、国税通則法の改正がありました。

納付税額の全額を納付済みで、うっかり申告書の提出を失念してしまったような場合に、無申告加算税を賦課するのは酷だということで、下記のような救済措置が設けられました。

国税通則法66条6項

期限後申告書が法定申告期限から1月以内に提出され、かつ、その申告書に係る納付すべき税額の全額が法定納期限までに納付されている等の場合においては無申告加算税は課されない。

 

おわりに

消費税のうっかりミスにより、12億円もの巨額の無申告加算税を課されたケースを見てきました。

この事案、担当者が申告書を引き出しに入れたまま忘れていた、消費税の申告期限に延長があると勘違いしていた、などいろいろな噂があります。

おそらく税理士が何らかの形で関わっていただろうと思いますが、だとすると間違いなく損害賠償ものです。

これほどの金額は、税理士賠償責任保険に入っていたとしてもカバーしきれないでしょうから、そうなると破産・・・

市井の税理士として背筋が冷たくなる話です。

 

とはいえ、人間にミスはつきものです。

軽微なミスは仕方ないとしても、重大なミスは防止できるよう、周囲の仲間にチェックを依頼するなど二重三重のチェックが肝要です。

 

今日はこんなところで。
それではまた。

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■Editor’s Note

昨日は税理士会支部での新会員歓迎会に出席。
支部活動の説明の後、中華料理をごちそうになりました。
良い仲間にも出会えて感謝です。 

■Today’s article

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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区で開業している公認会計士・税理士です。大手監査法人、M&Aコンサル、税理士法人を経て2016年9月に独立開業しました。妻と息子の3人暮らし。海外サッカーと囲碁が大好き。英語、数学を勉強中。 ブログでは、税務・会計の話題や仕事術、日々の出来事などを気ままに綴ります。